漢方治療とは
当院では漢方薬による治療も行っています。そもそも漢方薬は5~6世紀頃に中国から日本に伝わったとされる東洋医学のひとつでもあるわけですが、その後は国内で独自に発展を遂げてきました。明治以降は西洋医学がさかんに取り入られるようになったわけですが、昭和以降になって再び見直されるようになりました。
漢方薬は、人が元々持っている自然治癒力を高めていく効果があるとされ、植物、動物、鉱物などから薬効があるもの(複数の生薬)が組み合わさってつくられたもので、大半が合成された単一成分の化学物質で強い作用が働くとされる西洋薬とは異なります。ただ漢方薬の中には、いろんな成分が含まれているので、ひとつの処方であったとしても様々な病気や症状に対して効果が現れることが期待できるようにもなります。
なお、当院で処方する漢方薬は保険適用されているものとしていますが、そもそも大半の漢方薬に保険が適用されています。なお処方される漢方薬につきましては、エキス製剤(顆粒)によるものが一般的ですが、煎じ薬での処方につきましても保険が適用されます。
漢方薬が有効とされる病気や症状ですが、風邪、咳・喘息などの呼吸器疾患、便秘や下痢などの消化器疾患、更年期障害や月経障害といった婦人科疾患、アレルギー疾患のほか、心の病気についても用いられるなど幅広いです。このほか、終末期のがん患者様の症状を緩和させるために使用されることもあります。
こんな症状には、こんな漢方薬
よく使用される漢方薬ですが、風邪の場合は、葛根湯や麻黄湯、桂枝湯などが用いられます。咳が強い場合は、麦門冬湯(ばくもんどうとう)、竹茹温胆湯(ちくじょうんたんとう)があります。下痢など胃腸の症状がある場合は、真武湯、半夏瀉心湯(はんげしゃしんとう)、桂枝加芍薬湯(けいしかしゃくやくとう)といった漢方薬が処方されます。
また婦人科疾患でよく使用される漢方薬が3つあるのですが、これを漢方の三大婦人薬(当帰芍薬散、加味逍遥散、桂枝茯苓丸)と言います。いずれも女性ホルモンのバランスを整える効果があると言われているものです。当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)は、冷え、貧血症状、めまいなど、加味逍遥散(かみしょうようさん)はイライラ感や不眠、肩こりなど、桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)は重度の肩こりや多汗などにそれぞれ効果があると言われ、更年期障害、月経痛や月経困難症の患者様によく使われます。このほか、女性によくみられる便秘は桃核承気湯(とうかくじょうきとう)、妊娠中のつわりの症状が強い場合は小半夏加茯苓湯(しょうはんげかぶくりょうとう)などが処方されます。
このほか、心の病気で用いられる桂枝加竜骨牡蛎湯(けいしかりゅうこつぼれいとう)や柴胡加竜骨牡蛎湯(さいこかりゅうこつぼれいとう)などは、神経の興奮、過敏を抑える効果があるとされ、不眠症や不安障害、うつ病などの患者様に使用されることもあります。
漢方を処方するにあたっては、現状みられている症状を注意深く観察、患者様の訴えを聞くなどし、総合的に判断したうえで適切な漢方薬を用いるようにします。漢方薬の治療をご希望される方は、お気軽にご相談ください。